参院選後に「安倍・トランプ蜜月」の犠牲になるのは農家と自動車産業か?

外務省が出している「外交」という雑誌があるのだが、その最新号に載っている日本経済新聞ワシントン支局長の菅野幹夫氏が書いた「『蜜月』だからこそ厄介な日米貿易交渉」という記事は政権の考え方を端的に表しているようで面白く読んだ。

外交 VoL.55 特集:G20大阪サミットが描く世界像

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記事は安倍晋三ドナルド・トランプの個人的な関係は親密だが、貿易交渉は「厄介な対立の構造をとらえている」とする。

日米の駆け引きには双方が迎える重要選挙への思惑が重なる。日本は七月に見込まれる参議院選挙、米国にとっては二〇二〇年一一月に予定した次の大統領選挙である。より時間軸の短い日本で安倍政権が細心の根回しに動いたのは、農業関税での米側への歩み寄りが政権与党の「失点」と取られかねないことが背景にある。本来、米国を含めたTPPの合意の際に、農業関税の引き下げ問題はすでに国政選挙での審判を受けている。だが、今回の日米交渉で改めて対米関税を下げる合意を結べば「新たな譲歩」とみなされ、参院選、あるいは衆院選の前倒しを含めたダブル選挙で、地方の農業票などに響きかねない。

「国政選挙での審判」とは2017年の衆院選のことを指しているのだろうか?このときは森友・加計問題で窮地に立たされていた安倍晋三自ら「国難突破解散」と銘打ち、もっぱら北朝鮮弾道ミサイルの脅威ばかりが強調され各地で無意味な避難訓練なども行われていたように思う。
しかし、この2017年の衆院選の結果によって、2019年のいまアメリカ産農産物への関税を引き下げることが正当化されるというロジックはいかにも現政権らしくとても興味深い。もはや現在行われている日米の交渉では国内農家は犠牲になることが確定していて、それは2017年衆院選の結果により正当化されるから、今回の参院選では争点にすらならないというのである。
ついでに言うなら、2017年の衆院選の際には北朝鮮には「最大限の圧力」をかけると言っていたはずだが、それにもついても「信を得た」はずなのに無条件で対話に応じると変節しているちぐはぐさも現政権らしい。
ちなみに、2017年の衆院選の際の安倍晋三による「あいさつ」ではTPPについてまったく触れられていない。

北朝鮮の脅威、そして少子高齢化
この2つの国難を前に、今、政治には、明日を守り抜く重大な決断と実行力が問われています。
国民の信任なくして、前へ進んで行くことはできない。


今、わが国を取り巻く安全保障環境は、戦後、最も厳しいと言っても過言ではありません。
北朝鮮による、弾道ミサイルの相次ぐ発射や核実験の強行など、度重なる挑発に対して、国際社会の連帯を強固なものとするため、私は、世界でリーダーシップを発揮していく決意です。
拉致、核、ミサイル問題の解決に向けて、北朝鮮の政策を変えさせるため、国際社会とともに、北朝鮮への圧力を最大限まで高めてまいります。
危機管理にも全力を尽くし、皆様の生命と財産を守り抜いてまいります。


少子高齢化が急速に進む中で、日本が成長を続ける道は何か。
アベノミクスは、2つの大改革で挑みます。
ロボット、IoT、人工知能など最先端のイノベーションで生産性を劇的に押し上げる「生産性革命」。
そして、人生100年時代を見据え、あらゆる人にチャンスをつくる「人づくり革命」です。
いくつになっても学び直しとチャレンジの機会が保障される社会へ。
子供たちの誰もが、どんなに経済的に恵まれない家庭に育っても、意欲さえあれば進学できる社会へ。
幼児教育の無償化も一気に進め、全世代をあまねく支える社会保障制度へ、大きく舵を切ります。
2019年10月から10%へ引き上げる予定の消費税の安定財源を活用し、従来からお約束していた年金、介護の充実に加え、子育て世代の暮らしを守り、そして子供たちの未来を切り拓くため、投資を大胆に進めます。


この国を、守り抜く。
全身全霊を傾け、国民の皆様とともに、私は必ずやり遂げます。


自由民主党総裁
安倍晋三

総裁挨拶|衆議院選挙公約2017|自民党

国内農家が犠牲になることが決まっているのなら、いま行われている日米の貿易交渉で問題になっているのは何か。記事によればそれは日本による自動車輸出である。記事はトランプ政権が他国との交渉でも使った三つの「禁じ手」を列挙する。一つは、アメリカへの自動車輸出に対する数量規制。二つ目は通商拡大法232条に基づく自動車に対する追加関税の発動。三つめは為替操作を禁じる「為替条項」の導入である。
これらの「禁じ手」により日本の自動車産業が直接の打撃を受けるのか、あるいは別の産業が犠牲になるのか、日本政府が米国製の兵器などを買い入れることで妥協するのか、はたまた日米繊維交渉のときのように自動車メーカーによる輸出の「自主規制」が行われるのかは参院選後にならないと明らかにされないだろう。中国のようにアメリカの要求を受け入れず全面対決に持ち込むという手もあるが、官邸の政治家にも外務省の官僚にもアメリカとそこまでやりあうつもりはないだろうしその可能性は考えなくてもよいだろう。