よく読むといろいろおかしい「極東ブログ」の年金記事

はてなブックマークのトップページに上がっている「極東ブログ」の年金問題に関する記事なのだが、色々とおかしな記述が目立つ。
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2000万円貯められない庶民はもっと悲惨になるし、将来はもっと悪い状況になる

極東ブログ」は話題になっている報告書を読んで「ごく簡単にいえば、金持ち老人がもっと金を増やすための金融サービスはどうあるべきか、というのがテーマで、年金だけじゃ暮らしていけないという庶民の関心とはまったく関係なさそうな文書である」と言っているのだが、報告書を出した「市場ワーキンググループ」の第21回議事録*1ではこの点についても触れられている。

 関連しますが、例えば厚生労働省さんの資料でも、「マクロ経済スライドで中長期的な給付の水準が調整される」という表現になっているわけですね。これは、はっきり言って削減されるとか、低下するというのが事実だけども、それをやわらかな表現にしているのだけど、やわらかな表現にするということが批判を避けるという意味で賢明なのかもしれませんが、はっきり言うべきことははっきり言わなきゃいけない。

 今の池尾先生のお話を引き継ぐわけではないですけれども、厚労省の資料の23ページ、ここが1つ重要な図になるわけですけれども、先ほど池尾先生からもお話があった点ですけれども、代替率62.7%が2014年度、1974年生まれからは代替率が52%、50%と下がっていく。この代替率の高さ自体は意味がなくて、変化率が非常に重要な意味を持っているということですね。


 つまり、約63%のものが50に下がるということは、年金の実質水準が20%下がる、対賃金で評価して20%下がるということを意味している。特に基礎年金については、対賃金比で36.8%が26まで下がるということは、30%の実質年金が下がるということを意味しているということが、国民にこれで伝わるかどうかということだと思います。


 さらに、この次のページを見ると、24ページには、今の高齢者の標準的な収入・支出状況が出ていますけれども、今のマクロ経済スライドを受けると社会保障給付の19万円は、おそらく15万円ぐらいまで団塊ジュニア世代から先は下がっていくだろう。


 それから、非消費支出の2.8万円は、昨年5月の経済財政諮問会議の見通しだと、これが1.3倍、1.4倍ぐらいに上がってくるとなると、月々の赤字は5.5万円ではなくて、団塊ジュニアから先の世代は10万円ぐらいになってくるのではないか。しかも、それが長寿により長い期間続くということだから、早目に資産形成に入っていかなければいけないことを国民、特に若い世代に伝えるようにしなければいけないと思います。

 一方で、最初に委員からコメントがございましたのと同様に、表現がぬるくなったなと感じます。最近の金融庁さんのメッセージというのは非常に強くなって、具体的になった。そして、行動惹起に向けた、よりはっきりしたメッセージという意味で、僕は非常に高く評価していると、僭越ですが考えていたものですから、この言葉遣いがすごくぬるくなって、残念だと感じているところです。


 そして、全般にぬるくなった部分があることも含めてですが、特に現役期に対しては強烈な危機意識の惹起があってもいいのではないか。


 危機意識というのは、言ってみれば20世紀の1億総中流社会というものがまだ前提にあって、親御さんが教育をしてきて、その認識から抜け切れていないという途上に日本の我々世代がある中で、もうそうではないのだ、これから訪れる社会はいや応なく格差社会だ。格差社会というものが本来のグローバルスタンダードであって、格差社会をしっかりと受け入れた上で、自分たちがどう行動しなければいけないかという行動惹起につながるような表現がもう少しあったほうが、本気度が高まるであろうと感じています。


 一方で、矛盾することですが、全般に見ると、悲観トーン一辺倒が強過ぎるといいますか、これだと、国民がうれしそうに読むことができないのは当然のことなので、実際にここに入れていただきたいことは、まず、お金を持っている高齢層、持っていない高齢層が二極化しているというデータが先ほどはっきり示されているとおりでもありますので、とりわけ持っている世代に向けてはもっと前向きに、より豊かな人生を実現していくことの目的を盛り込んでいただきたいです。

つまり、「お金を持っている高齢層、持っていない高齢層が二極化」しているし、「月々の赤字は5.5万円ではなくて、団塊ジュニアから先の世代は10万円ぐらいになってくる」のだが、それを書くと「国民がうれしそうに読むことができない」ので「持っている世代に向けてはもっと前向きに」した結果が今の報告書だというのである。

極東ブログ」は「現在の国民が求めているのは、こんな報告書ではなく、これからの日本国民の多数の老後の生活像だろう」と言うのだが、日本国民の多数の老後の生活像はとても国民が「うれしそうに」読めないような悲惨なものになることが議事録からわかる。

ちなみに、ワーキンググループで配布された資料*2によると貯蓄残高が低い世帯の割合は近年増加している。

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金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第21回)資料2 厚生労働省提出資料 25ページ

ワーキンググループの再開は金融審議会総会で直後に報告されている

極東ブログ」は市場ワーキンググループが2016年に報告書を出した2年後に再開されたことを指して「これって、きちんと、麻生金融担当相の諮問を経ているのか?」と言うのだが、この件は田中良生副大臣も出席した第40回金融審議会総会で報告されている*3
そもそも「きちんと」諮問を経るというのがどういうことを指して言っているのかが疑問だ。
ちなみに、市場ワーキンググループを設置する理由となった諮問は「金融担当大臣麻生太郎」の名前で行われているが*4、第37回金融審議会総会で実際に諮問文を手交したのは副大臣であるし、副大臣は冒頭で諮問を行うとそそくさと退席してしまう。*5

○福岡副大臣
おはようございます。麻生大臣が国会審議中につきまして、私からご挨拶をさせていただきたいと思います。
(中略)
それでは、諮問を行わせていただきます。


金融審議会会長 岩原紳作殿


金融庁設置法第7条第1項第1号により、下記のとおり諮問する。


市場・取引所を巡る諸問題に関する検討。


情報技術の進展その他の市場・取引所を取り巻く環境の変化を踏まえ、経済の持続的な成長及び家計の安定的な資産形成を支えるべく、日本の市場・取引所を巡る諸問題について、幅広く検討を行うこと。


よろしくお願いいたします。


(諮問文手交)


○福岡副大臣


よろしくお願いいたします。


私はこの後また委員会審議等が入っておりますので、失礼させていただくことをお許しをいただければと思います。


○岩原会長


どうもありがとうございました。ただいまお話がございましたように、福岡副大臣は所用のため、ここで退席されます。


福岡副大臣、どうもありがとうございました。


○福岡副大臣


すみません。ありがとうございました。恐縮です。


(福岡副大臣退室)

そもそも発生源がなんであろうと年金問題は消えないし、麻生の「100まで生きる前提で退職金って計算してみたことあるか?」発言も消えない

極東ブログ」は報告書が出た責任は麻生太郎にはないし、報告書で述べられた問題は庶民には関係ないと言いたいのだろうが、実態はその真逆である。庶民の高齢者としての人生は報告書であげられたモデル世帯よりも過酷なものになるだろうし、下の世代では更に悪化する。そして、この報告書が出たときに真っ先に尻馬に乗って「100まで生きる前提で退職金って計算してみたことあるか?」と煽ったのが、自分が年金を受け取っているかも知らない麻生太郎だったのである。
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