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ふるさと納税で損をするのは誰か

ふるさと納税に関する記事が続いて目に入ったので少し調べてみようと思った。

ふるさと納税で損をするのは誰なのだろうか。参議院が公開している記事にわかりやすいものがあったので紹介する。

『自己負担なき「寄附」の在り方が問われる「ふるさと納税」』*1がそれだ。特に図表14がわかりやすいので以下に示す。
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この例では、3万円をふるさと納税して1.2万円相当の返礼品を得たとし、寄付先自治体で発生する事務コストを3千円としている。
この場合、得をしているのはそれぞれ、

そして損をするのは、

ということになっている。

面白いのは、全体の合計がゼロではなく事務コストの分で3千円のマイナスになっているということだ。つまり、ふるさと納税をした人と、国と各自治体を合わせて考えると、ふるさと納税というのは事務コスト分の損を生み出す仕組みになっているのだ。

また、ふるさと納税は直感的には居住地の税収が寄付先に移動するように見えるのだが、実際には居住地の自治体よりも国庫へ与える損害のほうが大きいことにも注目すべきだろう。

返礼品に費やされた1.2万円や、事務コストの3千円のうちいくらかは寄付先自治体の地域経済を潤すのだからいいだろうという反論もあるだろう。しかし高級牛肉などが格安で提供されていること自体が確実に通常の市場での売買に悪影響を与えるものであるし、ふるさと納税の返礼品を提供する業者として選定されることは強い利権となり、その選考過程は汚職の温床となるだろうことは想像に難くない。旧来の公共事業について指摘され続けてきたのと同じ問題を抱えているのである。

最後の「まとめ」に記されている内容も示唆的だ。

また、現在のところ、東京都はふるさと納税に否定的であるとみられるが、仮に東京都が豪華な返礼品によるふるさと納税に本格的に取り組むようになれば、逆に地方から税収を「吸い上げる」ことも不可能ではない。ふるさと納税は、制度上、必ずしも地方圏の自治体に有利に働くとは限らないのである。

『ふるさと納税の現状と課題』*2によれば、そもそもふるさと納税という制度は、平成18年に福井県知事が提案した「納税者が故郷の自治体に寄附を行った場合に、それに見合う税額を所得税と住民税から控除するという制度」をもとに検討を始めたものの、「当初の税収格差是正効果が期待できないと明らかになったにもかかわらず、制度の導入自体を見直すのではなく、はじめに導入ありきでその趣旨・目的のほうを置き換えて議論を進めた」結果、縁もゆかりもない自治体に金を送り嗜好品を受け取る制度に変質してしまったものだ。

都市部と地方の税収格差への対策として、『ふるさと納税の現状と課題』では消費税を地方の財源とし、法人税国税に移す税源交換が有力だとしている。税収格差が問題なのであればそのような本質的な解決策が導入されるべきであるし、国庫に負担を強い、市場原理と地方経済の倫理に悪影響を与え、当初の目的であった都市部と地方の税収格差の解消にも役に立たない欠陥制度であるふるさと納税は段階的に規模を縮小し、最終的に廃止されるべきだろう。

*1:三角政勝. 自己負担なき「寄附」の在り方が問われる「ふるさと納税」― 寄附金税制を利用した自治体支援の現状と課題 ―. 立法と調査 2015. 12 No. 371. 参議院事務局

*2:加藤慶一. ふるさと納税の現状と課題 ―九州における現地調査を踏まえて―. レファレンス 平成22年2月号. 国立国会図書館 調査及び立法考査局