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細谷雄一「外交」(有斐閣)、広瀬健夫「住んでみたカムチャツカ」(東洋書店)

細谷雄一「外交」(有斐閣

外交 (有斐閣Insight)

外交 (有斐閣Insight)


「外交」という曖昧な概念について、まず感情的な世論や任期の限られた政治家などの国内の政治要因に左右されやすい「対外政策」と専門の官僚がある程度の独立性と一貫性を保って行う「交渉」とを分けて考えることからはじめ、過去の大家による「外交」の定義の紹介、古代ギリシャにまで遡っての外交技術の発展の歴史と続く構成になっていて興味を持って読めた。
特に、近代的な外交技術がヨーロッパで発達したのは同じような規模で文化的にもある程度同質な国家が多く共存する環境だったからで、ローマ帝国に見られたような帝国的秩序が存在する場合には複雑な交渉は不要なので外交技術は発達しにくくなるという話は中華帝国を中心とした秩序の下にあった東アジアにも通じるということもあり面白い。さらに同質的なヨーロッパ外交の世界にアメリカ・日本・ソ連といった異質な国々が参加することで変化が生じていく様子や世界大戦・冷戦を通じての変化などについても触れられている。
フランス人思想家トクヴィルの言葉を引いて民主主義と外交について述べた部分には

「外交政策には民主政治に固有の資質はほとんど何一つ必要でなく、逆にそれに欠けている資質はほとんどすべて育てることを要求される」。というのも、「民主政治は国家の内部の力を増すには好都合である」けれども、「一国民の他国民に対する立場には間接的な影響しか持た」ず、さらに「大事業の細部を調整し、計画を見失わず、障害を押して断固としてその実現を図るということになると、民主政治はこれを容易にはなしえまい」

とあり、相手国と自国双方の利益のためにうまく妥協して交渉をまとめようとする外交官と「弱腰外交」を感情的に批判する世論のギャップという問題は戦前から認められていたものなのかと変に感心した。

広瀬健夫「住んでみたカムチャツカ」(東洋書店

住んでみたカムチャツカ (ユーラシア・ブックレット)

住んでみたカムチャツカ (ユーラシア・ブックレット)


カムチャッカの地理、生活、歴史などについてそれぞれ軽く触れていて、筆者が勤務していた大学の日本語科の学科長が自分より日本語がうまいロシア人を採用しないという話まで書かれてて面白い。
歴史についての記述に

日露開戦の知らせはトナカイと犬橇を使って、三ヶ月後の五月五日にペトロパブロフスクについた。

というのがあって、当時の僻地ではどういう感覚で時間が流れていたのか想像させられて楽しい。