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「搾取される感じがするものはとにかくもう嫌なんですよ」には耳を傾ける価値がない

「搾取される感じがするものはとにかくもう嫌なんですよ」 - Togetter
公的な空間では許容されない言説がなにかの拍子に表出することに価値があるとするならばそれは標本としての価値に限られる。たとえ日本の大学生の多くが本音では生活保護者の死を願っているということが判明したとしても、それはそのような状況が存在するということの確認の役に立つというだけの話であって間違ってもその言説の内容自体に価値があるということにはならない。彼らが痛みを感じているのだとしてもそれは私には関わり合いのないことであるし、そもそも「本音」とやらを口にすることで彼らは他人の痛みへの共感を否定している。
さらにいえばここで表明されている「本音」とやらもまだ彼らの本音には程遠い。「何ら生産性も無い」、金を稼ぐ能力が無い人間の死を願う一方で自らについては「搾取される感じ」が嫌だと主張する彼ら。「アッパーミドル家庭」に育った自らの地位を維持できないことに憤慨する歪んだ階級意識の持ち主が被害者の顔をしてみせながら加害者として弱者に死を強要することのグロテスクさは注目に値する。
ここで目標とされる社会階層が最上層ではなく「アッパーミドル」であるのは慎ましさから生じたものでは決して無い。下層を足蹴にするという罪と搾取構造の上位にあることを望むという罪の両方を引き受けることへの怯えや、そもそも社会の最上層へ到達する可能性が自らにはない現状への怠惰な追認が目標を上昇から現状維持へと下方修正させているのにすぎない。機会さえ与えられれば彼らはよろこんで搾取構造の上位へと駆け上がるだろう。
金を稼ぐ能力がない人間に生きる価値がないというのなら、搾取構造の上位にのぼることはおろか親の世代から引き継いだ地位すら維持できない人間にもまた生きる価値はない。被害者ぶったことを言う暇があるなら辞世の句でも読めばいい。
自分が一番の被害者であるという状況を作り出すために自分より悲惨な境遇にいる者に怠惰であるとか恥知らずであるといった道徳違反者のレッテルを貼るものに同情を示す必要はない。このような主張に寄り添うことで弱者の境遇が更に悪くなることはあったとしてもその逆は決して起こらないのだし、そもそもこの種の言説は建設的な議論の土台になるような強度を持ち合わせていない。弱者を踏みつけにして自らの地位を維持・向上させたいのなら被害者の顔をするべきではないし、被害者の顔をして同情を集めようというのなら強者はともかく弱者に対して他罰的な態度をとるべきではない。