職場のモテ気取りがうざかった

普段から「私はモテる努力をしています」「モテる努力をしている私は人格の陶冶もバッチリです」みたいに振舞っている同僚C。
しかし、時折怨念じみた感情をこちらに向けてくる。
当人より余程モテそうな雰囲気がある同僚Bに腰巾着のように付きまとっているので、尚更目立つ。
以前から私について色々と気に食わないようで、放っておいてくれればいいのに二人してモテるにはどうすればいいかなどのアドバイス(という名目の説教)を一方的に仕掛けてくる。
こういう人間に何か言ったところで有益な助言が得られるわけもないし火に油を注ぐだけなので適当にやりすごそうとするのだが、その態度が余計に彼らを刺激するのか結局ウンザリするほど説教を聞かされる羽目になる。
それにしたって昨日の仕打ちはあんまりだった。むこうから振られた話題に適当に合わせて会話していたはずが、些細な発言の言葉尻を捉えられいつの間にか私を糾弾する流れが作られてしまっていた。どこで覚えてきたのかテンプレ通りの対非モテ説教をつらつらと楽しそうに浴びせてくるBとその様子をニヤニヤと眺めるC。昨晩は二人の顔がずっと頭に浮かんで離れず、一睡も出来なかった。その日の言葉だけでなく今まで浴びせられてきた暴言、侮蔑、嘲笑の数々がCの歪んだニヤケ顔とともに蘇ってきて、それだけで顔面はヒリヒリと紅潮し胃腸がギリギリと沸騰をし始める。目覚めて見た鏡に映った自分の顔は、泣き腫らしたまぶたに寝不足が加わって我ながらひどい顔だった。
そして今日、出社した私は真っ先に掃除用具などを納めた物入れへ向かう。以前、防災訓練で見たのと同じ位置に目的の品、消火用斧はあった。手にとってすぐさまオフィスへ。入り口から背後を窺える位置に席を構えるCは呑気にネットなぞ眺めていた。握りしめた斧のしっかりとした質量を確認する。Cだけなら奇襲が成立するから確実に仕留められるとして、その後に狙うBについてはスピードが肝心だ。意外と冷静に状況を判断している自分に他人事のように感心する。彼らに教わった「変える努力」とやらを実践するのだ。「乾いた笑い」というのがどういう笑いなのかはわからないが、口元に笑みが浮かぶのを自覚する。Cの座席まで何歩で到達できるか目算しながら斧を大きく振りかぶる。もう後には戻れない。
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